テレワークを実施する企業が増える中、テレワークがずるいと言われたり、ずるいと思ったりしたことのある人もいるのではないでしょうか。
本記事ではテレワークの概要、ずるいと言われる理由、テレワークの問題点と、ずるいと言われないための対策について解説します。
テレワークとは
テレワークという言葉は「遠い(tele)」「仕事(work)」が語源といわれており、インターネットやITツールを利用し、在宅で勤務することを意味します。
他に在宅勤務を表す言葉にリモートワーク、在宅ワークがあり、リモートワークはテレワークとほぼ同じ意味で、デザイナーやエンジニアなどクリエイティブなスキルを要する仕事に対して使われることが多いです。
在宅ワークについては、在宅で勤務する点は同じですが、隙間時間のアルバイトや内職などの意味合いで一般的に使われています。
厚生労働省によるテレワークの定義
厚生労働省ではテレワークの定義を以下のように定めています。
テレワークとは「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のこと。Tel(離れて)とWork(仕事)を組み合わせた造語です。要するに本拠地のオフィスから離れた場所で、ICTをつかって仕事をすることです。
また、テレワークは働く場所によって、在宅勤務、モバイル勤務、 サテライトオフィス勤務に分けられます。
在宅勤務
在宅勤務は自宅で働くことを指し、テレワークといえば在宅勤務をイメージする人が多いでしょう。
実施している企業では、週1〜3日を在宅勤務にして、残りは出社というスタイルが一般的です。
モバイル勤務
モバイル勤務は、移動中の交通機関や顧客先、カフェなどで働くことを指します。
営業職など外出が多い職種の場合は、移動の隙間時間や、次のアポイントまでの待ち時間を有効活用できます。
また営業先に直行し、隙間時間にモバイル勤務をしてから自宅に直帰すれば、わざわざ会社に戻って仕事をする必要もなくなり、ワークライフバランスの向上にもつながるでしょう。
サテライトオフィス勤務
サテライトオフィス勤務は、会社が設置した部門ごとの教養オフィスのことを指す、施設を利用した働き方です。
専用型と共用型があり、専門型は自社や自社グループの社員のみが利用するサテライトオフィスです。
一方共用型は、社内専用ではなく複数の企業や個人事業主が共用するサテライトオフィスで、最近ではシェアオフィスまたはコワーキングスペースと呼ぶ場合もあります。
当初は利用者の多くがフリーランスや起業家でしたが、最近は企業が共用型のサテライトオフィスと契約し、従業員に利用させるケースが増えつつあります。
テレワークに向いている職種
職種によってテレワークが実施されている割合が異なるというデータがあります。
以下の図1によると、研究職や管理職、専門・技術職がテレワークに向いている職種といえます。
一方、販売や農林漁業、生産工程、建設、接客や介護のサービス業についてはテレワークを実施している割合が低いです。
図1. 職種別 雇用型テレワーカーの割合
出典:令和2年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-|国土交通省
テレワークがずるいと言われる理由
テレワークがずるいと言われる主な理由には以下の3点が挙げられます。
さぼっているのではないか
テレワークは上司の目が行き届かないため、さぼっているのではないかと疑われることがあります。
出社している社員はデスクを離れることが難しい一方で、テレワークは仕事量を調整して息抜きがしやすい環境なので、出社している社員が不公平だと感じることが、テレワークがずるいと言われる理由のひとつになっています。
出社している社員に負担がかかる
テレワーク社員が増えると、出社している社員に負担がかかります。
会社内の雑務や電話対応、来客対応などの業務はテレワークの社員が行えないため、出社している社員はテレワークをしている社員の分まで対応しなくてはならないです。
結果テレワークの社員よりも業務量が増え負担がかかるので、出社している社員がテレワークに対してずるいと思う理由になります。
通勤時間がかからない
出社している社員は定時に退社したとしても通勤時間がかかってしまう一方、テレワークには通勤が必要ないので時間の節約が可能です。
テレワークの社員は通勤分の浮いた時間をプライベートに充てることができるので、出社している社員からはずるいと思われる理由になっています。
テレワークだからこその問題点
ずるいと思われる一面があるテレワークですが、テレワークだからこその問題点もあります。
情報がリアルタイムに入ってこない
テレワークの一番の問題点は、対面での会話がなくなることで出社時よりも情報が入りにくくなってしまう点です。
出社している社員だけで仕事が回ってしまうとチームの一体感が生まれにくく、テレワークの社員が疎外感を感じる原因になります。
また困ったときに助けを求めにくくなり、結果としてチームや会社への信頼関係が薄まってしまいます。
実際に、以下の図2のテレワーク経験者へのアンケート結果によると、コミュニケーションのとりづらさに課題があったと感じる人の割合が約半数です。
図2. テレワークを実施して悪かった点(雇用型テレワーカー全体)
出典:令和2年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-|国土交通省
評価されにくいのでは
テレワークでは、どのような姿勢で業務を行っているかなどの勤務態度がみえにくい点や、成果が出るまでどのようなプロセスを踏んできたかなどの可視化が難しい点において、評価が成果ベースになってしまいがちです。
仕事に取り組む姿勢を重視する企業は多く、集中力、周囲との協力、積極性などがみえることは評価につながります。
成果だけを評価することに対して向いていない職種もあるため、テレワークだと評価されにくいのではという不安につながります。
家のネット環境や電気代が必要
在宅で勤務するためには、仕事のために最低限の環境を整える必要があります。
会社によってはパソコンや電子機器が提供されることもありますが、自分で用意しなければならない場合は費用がかかるでしょう。
また家の中で過ごす時間が増えるので、エアコンをつけている時期は電気代がかかり、予想外の出費となることがあります。
会社の方針に従っているだけなのに、ずるいと言われてしまう
緊急事態宣言などに際してテレワークを推進する企業が多い中、会社の方針に従って在宅勤務をしているだけなのに、ずるいと思われるのは不服だという声もあります。
以下の図3によると、多くの企業が緊急事態宣言下において、テレワークを実施しています。
図3. 緊急事態宣言前後の勤務先のテレワークに関する方針の変化
出典:令和2年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-|国土交通省
ずるいと言われないための対策
テレワークがずるいと言われないための対策として、出社している社員とテレワークの社員、双方の意見を尊重することが重要になってきます。
情報を共有する
テレワークがずるいと言われないための対策のひとつとして、出社している社員とテレワークの社員との間で、業務内容や進捗状況、抱えている案件、成果が出ているかどうかなどの情報を逐一共有しておくことが重要です。
情報を可視化しておくことで、さぼっているのではと疑われることを防ぎます。
評価基準を明確にする
テレワークの社員に適した評価基準を明確にすることで、評価基準への疑問、不安を解消することができます。
出社している社員にとっても、どのような基準で評価されるか共有されることで、不満を減らす効果があるでしょう。
テレワークはプロセスがみえにくい分、成果主義に偏りがちです。しかしなかなか結果を出せない従業員はモチベーションが下がり、離職率が上がる原因になってしまいます。
数字で結果を測れない業務や、成果を出せなかった場合にも、結果に至るまでのプロセスにも目を向けて、結果とプロセス双方をバランスよく評価する基準をつくることが理想的です。
ツールを導入する
テレワーク下のコミュニケーションにはツールを活用することで効率性が高まります。
情報の共有不足、コミュニケーション不足がトラブルにつながる恐れがあるため、誰がどのような業務を行っているのかを可視化する必要があります。
チャット式で気軽にやり取りができるコミュニケーションツールや、スケジュールやタスク管理ツールなどの導入を検討するといいでしょう。
テレワークでは情報の可視化と共有が重要
テレワークでは仕事に対する姿勢を直接見ることができないことで、ずるいと言われてしまうことがあります。
対策として、相手の姿がみえないからこそ、情報の可視化をして、誰がどのような業務を行っているのかを共有することが重要です。出社している社員に損をしているわけではないことをわかってもらいましょう。
また、コミュニケーション不足によって業務が滞ったり、テレワークに適した評価基準が定まらずに評価にばらつきが出てしまったりする恐れもあります。
コミュニケーションやタスク管理ツールの導入で情報を徹底的に可視化することで解消できる場合もあるので、ぜひ検討してください。