テレワークが普及したことにより、首都圏に住んでいる人が地方移住を検討するケースが増えています。
一方「地方でテレワークで生活できるのか」「地方でテレワークするのにデメリットはないのか」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
本記事では地方でテレワークするメリット・デメリット、移住支援制度を解説します。
地方でテレワークする人が増えている背景
地方でテレワークする人が増えている理由のひとつに、転職せずとも地方移住できるようになった点が挙げられます。
以前までは、地方移住する際には一旦仕事を辞めて、転職しなければならない場合が一般的でした。
しかしテレワークの普及により仕事を続けたまま移住できるようになったため、地方移住の敷居が低くなり、地方でテレワークする人が増えているのです。
テレワーク経験者は地方移住に肯定的という調査結果
都内企業のテレワーク導入率調査結果によると、2020年3月時点では24.0%だったテレワーク導入率が、2020年4月時点では62.7%と大幅に増加していることがわかります。
図1. 都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率
図2からわかるように、テレワーク経験者は通常どおり勤務していた人と比較すると、コロナウイルス蔓延前よりもワークライフバランスに関する意識が肯定的に変化した割合が高いです。以前まで首都圏に住んで満員電車で通勤していた人にとって、テレワークの導入が生活環境を見直すきっかけとなりました。
さらにテレワーク経験者の24.6%、約4人に1人が地方移住への関心が高くなったとも回答しており、今後より地方移住への流れが加速することが予測されます。
図2. テレワークの利用状況(テレワークによる意識変化)
出展:新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う 現時点での社会・国土の変化について(2月更新)|国土交通省
規模が大きい企業ほどテレワーク導入率が高い
以下の図3では、企業規模が大きいほどテレワーク導入率も高いことがわかります。
また、本社機能を地方に移転する企業も出てきています。
今後は地方でテレワークすることが選択肢のひとつになってきます。
図3. 従業員規模別テレワーク導入率
地方でテレワークするメリット
地方でテレワークする主なメリットとして以下の4つが挙げられます。
地価・物価が安い
地方は首都圏と比較すると地価・物価が安く設定されています。
土地の価格が安いので、賃貸物件では面積が広いにも関わらず、首都圏よりも家賃が安価に設定されていることが多いです。
また、新鮮な食材が安価に手に入るため、毎月の食費が抑えられる傾向にあります。
地方では首都圏よりも飲食店が少ないことから、外食費も減ります。
地元で働ける
地元で働けるのも地方でテレワークするメリットのひとつです。
移住では、進学や就職を機に首都圏へ出た人が再び地元に戻るUターンも多く、慣れ親しんだ生まれ故郷で心穏やかにテレワークができます。
また地元だと既に知り合いがいるので、地方移住の際に取り上げられやすい地域住民とのコミュニケーションの問題も発生しないです。
家族と過ごす時間が増える
地方でテレワークするメリットとして、通勤時間がなくなる分、家族と過ごす時間を確保できる点も挙げられます。
とくに朝・夕方の時間帯に余裕がうまれるため、家族揃ってゆっくりと食事ができます。
過ごす時間が増えることで自然に家族間の会話も増え絆が深まり、喧騒を離れて心身共にリラックスして過ごせることで、より良い家族関係の構築が期待できます。
移住支援制度を利用できる
地方に移住する際に利用できるのが、国や自治体が地方創生の観点で積極的に設けている移住支援制度です。
地方移住に興味を持つ人が増加している背景から、移住支援を推進している地方自治体も増えてきており、移住の際の経済的な負担の軽減が期待できます。
移住支援制度を利用するためには、一定の条件をクリアしなければいけないので、事前に国や移住検討先の自治体のHPなどで情報を集めておきましょう。
地方でテレワークするデメリット
一方地方でのテレワークにはデメリットもあるので、主に以下の3つを理解しておきましょう。
車が必要になる
電車やバスなどの公共交通網が整備されていない地方において、主な移動手段は車になるため、首都圏に住んでいて車を所有していなかった場合は車を購入する必要があります。
また、車を所有することで発生する駐車場やメンテナンスなどの管理費が、想像以上に家計を圧迫してしまう可能性があります。
事前に生活にかかる費用の中に車の管理費も計上しておき、どれくらい必要かを具体的に把握しておくことがおすすめです。
他の社員とのコミュニケーションが減少する
地方でテレワークをしていると、社員同士のコミュニケーションが減少します。
対面でのコミュニケーションの際は、話す内容だけでなく、身振りや表情、声のトーンから相手がどのような気持ちかを汲み取っています。
しかしテレワークの主なコミュニケーション方法である文字の場合、得られる情報が減り、社員同士の信頼関係が構築されにくくなります。
社員同士の信頼関係が薄くなることで会社自体への愛着も形成されにくく、社員のモチベーション低下につながる恐れもあります。
また文字でのやり取りにおいては、小さな認識のずれや誤解などのトラブルが発生しやすく、生産性の低下を招く可能性もあります。
顔をみて話ができるオンライン会議のシステムや、タイムリーなやり取りが行えるチャットなどのコミュニケーションツールの導入、面談の実施などが解決する手段として求められています。
出社に時間とお金がかかる
地方でテレワークするデメリットとして、出社を求められた際に時間と交通費がかかる点も挙げられます。
テレワークが普及したとはいえ、対面の価値を重視して週に数回の出社を求める企業が多いです。
図4. 都内企業の1週間でのテレワーク実施回数
出社するためには時間と交通費だけでなく、多大な労力も必要です。出社を求められる企業で働いている場合は、無理なく出社できる距離の地域への移住を検討しましょう。
地方でテレワークする際に利用できる制度
国や自治体が地方創生の観点から積極的に移住支援のための支援制度を設けています。移住支援を利用する際は、まず自分が支援対象者の条件をクリアしているかどうか確認しましょう。
内閣府
内閣府の移住支援制度に「起業支援金」と「移住支援金」があります。東京一極集中の是正と、地方の働き手不足対策を目的としており、それぞれ支援対象者と上限金額が設定されています。
起業支援金(最大200万円)
都道府県が地域の課題解決のための起業に対して助成を行うのが「起業支援金」で、内閣府によると対象者は以下の通りです。
>新たに起業する場合(次のア~ウすべてを満たすことが必要)
ア.東京圏以外の道府県又は東京圏内の 条件不利地域において社会的事業の起業を行うこと。
イ.公募開始日以降、補助事業期間完了日までに、個人開業届又は法人の設立を行うこと。
ウ.起業地の都道府県内に居住していること、又は居住する予定であること。
引用:起業支援金|内閣府
起業する事業の分野として、地域の特産品を活用した飲食店や、まちづくりの推進、子育て支援などが、各地域の課題に対して設定されています。
支援金額は、起業計画の審査に通った企業に対して、起業に必要な経費な経費の約2分の1に相当する額を交付しています。
移住支援金(最大100万円)
東京23区に在住または通勤する人が、地方へ移住して起業や就業を行う際に、交付金 が支給されるのが「移住支援金」で、内閣府によると対象者は以下の通りです。
>移住支援金の対象 ※下記すべてに該当する方が対象となります。
【移住元】東京23区の在住者または東京圏から東京23区へ通勤している者
【移住先】東京圏以外の道府県又は東京圏の条件不利地域への移住者(移住支援事業実施都道府県・市町村に限る)
【就業等】地域の中小企業等への就業やテレワークにより移住前の業務を継続、地域で社会的起業などを実施
引用:移住支援金|内閣府
支援金額は100万円以内で、単身の場合は60万円以内です。各都道府県が設定する額が交付されるので、移住を検討している地域が、地方創生移住支援事業を実施するを実施しているかどうか事前に確かめておきましょう。
各地方自治体
各地方自治体の移住支援制度を利用する場合は、検討している移住先が支援を実施しているかどうか、または支援対象の条件をクリアしているかどうか事前に確認しておくことが重要です。
各地方自治体で設けている移住支援制度は自治体によって異なるので、移住検討先の自治体のHPでチェックしましょう
また移住支援に積極的な自治体によっては、移住の相談デスクが設置されている場合もあります。
支援制度以外にも知りたいことがある場合は、一度相談デスクに尋ねてみることもおすすめです。
オンラインで移住相談を受けている自治体もあるので、あわせてチェックしておきましょう。
テレワークの普及によって地方移住の敷居が低くなった
コロナ禍でテレワークが普及し、移住への支援制度が充実したことにより、地方移住への敷居が低くなってきました。
現在テレワークで働くことができていて、首都圏に住む必要がないのであれば、地方への移住を考えてみてもいいかもしれません。
ただし地方でのテレワークにはメリット・デメリットがあるので、それぞれ十分に理解したうえで、理想のライフスタイルや働き方に合うかどうかを検討しましょう。
移住支援制度を利用すれば費用面での負担を軽減することができるので、移住に興味がある場合は移住先候補の自治体からの情報を集めながら、徐々に計画を進めることがおすすめです。
この機会に改めて生活環境について考え、地方でのテレワークを検討してみてください。